寄稿者:しげぞう
2021年12月9日、次の記事が朝日新聞デジタルのサイトに掲載されました。
この記事の中で、かなり悪質な問題があります。
県教委は共産県議の指摘を受け、11月から同校を通じて教職員計約10人への聞き取りを実施。西川氏の発言は、日本のアジア諸国への侵略や植民地支配を認めて公式に謝罪した「村山談話」や、日本がアジアの人々に多大な損害を与えたなどとする中学校の学習指導要領と照らし、「説明が不十分だった」と判断した。
問題点その1 「村山談話」の後に上書きする形で出された「終戦70周年安倍談話」が無視されていること。安倍談話に照らしてどうなのか。全く問題がない。
問題点その2 「日本がアジアの人々に多大な損害を与えたなどとする中学校の学習指導要領」など存在しないこと。
学習指導要領の「本文」ではなく、「解説」部分を「指導要領」そのもののように扱っているのはおかしい。法的拘束力があるのは、「本文」であり「解説」ではない。
ちなみに、「解説」の該当部分は以下の通り。
戦時下の国民の生活については,身近な地域の事例を取り上げるなどして,戦時体制下で国民の生活がどう変わったかについて着目するとともに,平和な生活を築くことの大切さに気付くことができるようにする。この事項の学習に際しては,世界の動きと我が国との関連に着目して取り扱うようにする。また,我が国が多くの国々,とりわけアジア諸国の人々に対して多大な損害を与えたこと,各地への空襲,沖縄戦,広島・長崎への原子爆弾の投下など,我が国の国民が大きな戦禍を被ったことなどから,大戦が人類全体に惨禍を及ぼしたことを理解できるようにして「国際協調と国際平和の実現に努めることが大切であること」(内容の取扱い)に気付くことができるようにする。
これは本文部分「戦時下の国民の生活」の解説であり、法的拘束力のない部分で、これに反する云々ということはプロパガンダでしかない。
日本が日米戦争に突入した理由は複雑であり、一つに絞ることはできないが、少なくとも「大東亜共栄圏」を掲げていたことは「歴史的な事実」であり、それをわかり易く「アジア全体を栄えさせ、独立させるため」と解説することは、少なくとも日本が公式に掲げた立場を説明するのに、何の問題があるか、ということになる。
勿論、他の主張を、多面的、多角的に取り上げてもかまわないが、日本の立場を取り上げることがあたかも問題であるかのような共産党のプロパガンダや、それにあたかも問題があるかのように、唯々諾々と屈する県文教当局のお粗末さはいただけない。当時の日本の主張や公に掲げられた戦争目的をまずは知ることなくして、戦争について考えることなどできる訳がないだろう。
歴史について、考えさせずに、「アジア諸国の人々に対して多大な損害を与えた」ということのみに視野を限定させるという結果をもたらし、思考停止させることが目的としか思えない。そうしなければ、戦前は暗黒の時代であるという共産党の主観的なプロパガンダが破綻するからだ。終戦直後ならいざ知らず、戦後70年以上経過して、その間に多大な歴史的研究の蓄積をも蹴散らして、未だに共産党のプロパガンダに呪縛される教育界の閉鎖体質こそが、子供たちの未来を閉ざすものだと、なぜ気付かないのだろうか。
関連情報
<神戸大学経済経営研究所 新聞記事文庫 東南アジア諸国(10-025)
東京朝日新聞 1942.1.23 (昭和17)>
《私的憂国の書》