<2.22竹島の日>昭和38年の朝日・天声人語「韓国は李ラインを“平和ライン”と呼ぶが、現状は平和とウラハラの不法ラインである」「公海上で日本漁船員を捕えるこの理不尽は黙って見過ごせるものではない」

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昭和38年(1963年)9月28日付け・朝日新聞朝刊・天声人語

李ライン海域で日本漁船がまた捕獲された。韓国警備艇の武装した隊員が乗移り、三十四人の日本人船員を連行している。同じ二十七日の朝、別の漁船も追われ十人の船員は海に飛び込んで逃げ、船長は一時重体だったという。冷たい海中を命がけの避難だ。李ラインでの無法がまたはげしくなった

▼この海域はいま、アジ、サバの盛漁期で、五、六百隻の日本漁船が出漁している。そこをねらって韓国警備艇は不意うちをかける。ライトを消し、島陰づたいに近寄り、銃撃をあびせたり。日本側も巡視船を増し、警戒警報を出しているが、捕獲は防ぎきれず、今年になってすでに十六隻。昨年一年中に捕獲された数よりも多い。

▼李ラインを越したという理由だけで、これまでに多数の船員が釜山の刑務所に入れられ、船はとりあげられている。優秀船だとそれが韓国警備艇に早変わりして、日本漁船を追ってくる。海のオオカミのような韓国警備艇の仕業だ

▼そもそも李ラインというのは昭和二十七年一月に韓国大統領の李承晩氏が、国防上の要請によるとして、設定を宣言したものだが、それは公海上に一方的に設定したもので、国際法上不当なものだ。日本政府はこのラインを認めていないが、過去十年間に韓国は勝手に実力を行使して、約三百隻の日本漁船を抑留、数多くの乗組員や家族を泣かせている。

▼九月にはいって、韓国側がさかんに捕獲を開始したのは、大統領選挙と関係があるらしい。韓国の漁業界、漁民の票を得るために、朴政権は海洋警察隊に日本漁船捕獲を命じたとも見られる。選挙の術策として隣国の漁船捕獲を激しくするというやり方が、国際常識からも許されるかどうか

▼韓国漁民の間に、日本漁業の技術に対する恐れと警戒の気持ちがあるかもしれぬが、資源の保護や漁業協力について日韓交渉で、双方とも誠意を尽くして話合えばよい。漁民票をねらった強引な捕獲はこれまでの交渉での双方の努力を無にしはせぬか

▼韓国は李ラインを“平和ライン”と呼ぶが、現状は平和とウラハラの不法ラインである。公海上で日本漁船員を捕えるこの理不尽は黙って見過ごせるものではない。

 

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